流行の3Dについて

最近は3D映画だけでなく3Dテレビや3Dパソコン、さらに3Dゲームや変換ソフト等が次々と発売されていますので、興味津々という方も多いはずです。

しかし、この3D、実はちょっとやっかいなものなので、何かのお役に立てればと思い、眼鏡店の視点からご説明させていただきます。

          

■ 3Dは疲れるものです!

最近3Dが一気に増えましたよね。 映画を皮切りにテレビやパソコンも発売されました。
でも、「3Dは苦手〜」「3Dは疲れるよね」「酔っちゃった」「クラクラする」「頭が痛くなっちゃった」というご感想をよくお聞きします。
実は個人差はあるようですが、3Dというのは根本的に疲れる・酔うものなのです。
では、なぜ疲れるの?どうして酔うの?について、順番にご説明していきます。

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1.両眼視差.jpg人の目は物を見る時、図のように左右の眼で違った情報を得ています。

これは左右の目が離れている(成人の場合62〜66mm)からですが、この左右の見え方の違いを脳内で融合して立体感や距離感として認知しているのです。

因みに、単眼でも経験等から立体情報を得る事ができますが、ここでは説明から除外させていただきます。

            

                

2.輻輳.jpg次に、目の動きと調節ついてご説明します。

遠くを見る時の目線はほぼ平行ですが、近くを見る時は両目が内側によって寄り目になりますよね。 この目の動きを専門用語で輻輳(ふくそう)と言います。

さらに、近くを見る時には目が緊張して力を入れる感覚がありますよね。これは調節という、いわゆるピント合わせです。

人の目は日常的にこの二つの機能を同時に使って、物を見ているのです。

        

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立体感や距離感、目の動きや調節といった内容をご理解いただけたところで、いよいよ本題の 「疲れる」 理由についてご説明致します。

             

3.調節と輻輳の矛盾.jpg日常生活において人の目は、常に見ようとしている物に対して輻輳(目の角度調整)と調節(ピント合わせ)を行っています。

そして輻輳と調節は常に一定の距離となりますが、3D映像は、図のように輻輳と調節の距離に違いが出てくるのです。

輻輳の角度と距離は立体化された映像を見ようとして実際の画面より近い所に合わせようとするのに対し、調節は画面上でピント合わせしようとしています。

これにより眼の動きが日常生活とは違う働きとなり、不快感に繋がるという訳です。

もう少し簡単に言うと『ピントはスクリーンに合わせているのに、目は手前に飛び出した立体映像を見ようとして、普段とは違う目の使い方をしているから「疲れる」「酔う」「クラクラする」「頭が痛くなる」といった症状が出る』ということです。

さらに、映画などは長いと2時間近くも上映される訳ですから、飛び出した画像を見たり、奥行きのある画像を見たりを頻繁に繰り返す事で「疲れる」といった症状を助長してしまいます。

いかがでしょうか。 ご理解いただけましたでしょうか?

                

※ 補足
2010年8月4日付で、国民生活センターより「3D映画による体調不良」という報告が入っております。詳しくは、下記をご参照ください。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20100804_2.html

              

               
■ 3Dを上手に楽しむ為には?

始めに結果を申し上げますと、3D映像を上手に楽しむ為の決定的な解決策はありません。

どうして? ・・・ もともと普通に楽しめる方もいらっしゃいますし、昔から苦手という方も多くいらっしゃいます。 要は、感覚的な問題には個人差が大きく影響するからです。

さらに、技術力の進歩により3Dの種類が多くなったこともあります。 3Dの種類については次項でご説明しますので、興味のある方は読んでみてください。

しかし、立体的に物を見るには両眼の視力が0.4以上あり、さらに左右の見え方に大きな差が無いことなどの条件がありますので、正しいメガネを作るという観点での眼鏡店としてのお手伝いは可能です。

また、3Dが不得意な方がお買い物で失敗しないように、事前に得意・不得意を調べる事は可能ですから、ご希望の場合はお申し付け下さい。

               

                

■ 3Dの種類

大きく分けると3種類あります。
 A.ビューアー方式
  ディスプレイそのものを「のぞき込む」もしくは「頭部に搭載する」方式の総称

 B.グラス方式
  左右の映像を分割するための仕組みを「グラス側」に持たせている方式

 C.裸眼方式
  左右の映像を分割するための仕組みを「ディスプレイ側」に持たせた方式

    

さらにその中でいろいろな方式があります。 今後、3Dの増加に伴い大きく変化(進化)すると思われますが、注目したいのは 「B-2」 「B-3」 「C-1」 「C-2」 でしょう。

              

A-1 ステレオスコープ方式

4.ステレオスコープ.jpg世界初の立体ディスプレイで立体鏡とも呼ばれています。

写真より前に発明されたもので中央の鏡の反射を利用して二枚の絵を立体視するというものです。

現在もステレオ写真の愛好家が世界中に数多くいます。

            

              
A-2 ヘッドマウント方式
立体ディスプレイをのぞき込むステレオスコープ方式に対して、頭部に搭載するのがヘッドマウント方式です。 バーチャルリアリティのシステムで多く用いられており、テレビ番組等でよく紹介されているものです。

                   

B-1 アナグリフ方式
5.アナグリフ式.jpgグラス方式 (メガネを使う) の立体ディスプレイでは最も古い方式で、赤青眼鏡方式とも呼ばれ昔から親しまれている方式です。

作成が容易で、しかも赤青のフィルムさえあれば簡単に見る事が出来るので、印刷物や雑誌の付録、アミューズメント施設のアトラクション関連になどに多く使われている手法です。

                  

                  

                  

実際に写メでアナグリフ方式の写真を作成してみました。NHKアナグリフ.jpg

赤青眼鏡(フィルム)を通してみると、遠くに見える少し高いビル(NHK渋谷)に対して、手前の電柱が浮き上がって見えました。

途中にある木々の緑にも奥行きを感じられ、我ながら簡単に作れて面白いと思ってしまいました。

                       

                 

B-2 偏光フィルタ方式
6.偏光フィルタ方式.jpg偏光フィルタの遮光効果を利用しているのが偏光フィルタ方式です。

左右の映像を互いに直交した2枚の偏光フィルタを通して映し出し、それらに対応するフィルタが付加された偏光グラスを用いて左右眼に分割して見る方式です。

高解像度かつフルカラーで再生でき、さらに多人数で同時に見る事が可能で、しかも偏光グラスが比較的に安価な為にアミューズメント施設で多く利用されています。

因みに、3D映画の上映で注目されたワーナーマイカルは、偏光フィルタ方式(円偏光のREAL-D)を採用しているところが多いようです。

また、2010年発売のデスクトップ型のパソコンも、偏光フィルタ方式を採用しています。

              

               

B-3 時分割方式
7.フレームシーケンシャル方式.jpg時分割方式はフレームシーケンシャル方式とも呼ばれ、左右の映像を時間で分割する方式であり、赤外線エミッターと液晶シャッターグラスを用いて映像を見る方式です。

理論的には図のイラストのように立体映像を捉えていますが、実際はモニターから送られてくる毎秒120コマ(片眼60コマ)の映像と液晶シャッターグラスが同調して、片眼で一秒間に60回もシャッターが開いたり閉じたりして連続的に左右の画像を認識する仕組みです。

これにより左右の目で違う画像を見る事ができますので、立体感を得る事が可能になったという訳です。

因みに2010年夏〜秋に発売の国内大手四社の3Dテレビは、全てフレームシーケンシャル方式を採用しており、3D放送のBS11、ケーブルTVのJ:COM、スカパーHDも同じ方式を採用しています。

さらに同年発売のノート型のパソコンやSONYのPS3もフレームシーケンシャル方式を採用しており、注目度の高い方式ということでしょう。

尚、映画館ではTOHO系や109シネマズが採用しています。

              

              

C-1 パララックスバリア方式
8.パララックスバリア.jpg通常、垂直方向に入った細かいスリットの後方に左右の映像を垂直方向に交互に並べて配置し、特定の距離と角度から見ることで左右の映像を分割して見る仕組みです。

最大の特徴は、専用グラスを使わずに立体視が可能な事でしょう。 専用グラスを使う煩わしさが無くなります。

ただし、最大の弱点は、特定の距離と角度から見ないとならない事です。

これにより人数や画面の大きさも限られてしまいますので、携帯電話やゲーム機といったパーソナルな使用での用途に限られる事になります。

因みに、子供から大人まで大人気のニンテンドーDSは、2011年3月にパララックスバリア方式を採用したニンテンドー3DSを発売すると発表しています。

                

                   

C-2 レンチキュラ方式
9.レンチキュラ.jpgレンチキュラとは「レンズ状の」という意味で、通常は半円筒型が連なったレンズを指します。

パララックスバリア方式と同様にレンチキュラの後方に左右の映像を垂直方向に交互に並べて配置し、特定の距離から見ることで左右の映像を分割して見る仕組みです。

2010年12月に発売の東芝の裸眼3Dテレビは、この方式の進化系を採用しているそうです。

因みに、富士フィルムのFinePix REAL 3Dという3Dデジカメで撮影した写真は、パララックスバリア方式のデジタルフォトフレームで楽しめ、さらにレンチキュラシートを利用した3D写真にする事が可能なので、記念品として贈り物にされる方もいらっしゃるそうです。

3D写真をもらったらちょっと嬉しいかもしれませんね。

             

               
■ 3Dに関する補足

・3Dは子供に見せていいの?

メーカーの取扱説明書には 「6歳以降の視聴を推奨」 と記載されている事が多いようですが、眼鏡店としては、お子様の視機能が安定すると言われている 「7歳以降の視聴」 をお願いしたいところです。

また、短時間の視聴であることと、疲れや酔いを訴えた場合は、即3Dの視聴を中止していただく事をお薦めします。

              

・3D映画を快適にするテクニックは?

前記したように決定的な解決策はありませんが、ここまで読んでいただいたお礼に映画についてのテクニックの一例をご紹介します。

上映方式によって差はありますが、座席を選ぶ場合は絶対的に真ん中の席がお薦めです。

3Dに不安のある方は、多少は眼の動きが少なくなりますので、後ろの席の方が良いかもしれません。

もし、席を選べない場合はゴーストが少ないフレームシーケンシャル方式を採用したXpanDの映画館が良いかもしれません。

お子様と一緒に楽しむならメガネが軽いREAL-D方式。 お子様用の小さいメガネも用意されています。

完璧な立体感を体験したいならIMAX3Dがお薦めですが、現在日本全国に4館しかないので・・・。

Dolby3Dは色調が豊なので、色にこだわる方には良いかもしれません。

とは言え個人的な見解も入っていますので、是非、いろいろお試しください。

         

・2Dの映像を3Dで楽しめないの?

基本的に3Dではない映像は3Dテレビを使っても立体的に見ることは出来ませんが、擬似3Dという機能がついたテレビもありますので、その機能を使えば擬似3Dとしてみる事は可能です。

また、全てではありませんが、今まで発売された2Dのゲームを3Dに変換するソフトも販売されていますし、2DのDVDを3Dに変換してくれるソフトも販売されています。

ただし、あくまでも3D対応のモニターが必要になりますのでご注意ください。

                 

・今後、3Dは増えるの? 

以前、3Dが流行りそうになった時は、機材不足と圧倒的なソフト不足から廃れてしまいましたが、今回のブームはちょっと違うように感じています。

機材面では、既に家庭用が発売されている事からも判るように、どんどん種類も増え価格もお手頃になって行くでしょう。 ブルーレイの登場も大きな違いです。 何ていってもデータ容量が違いすぎますから。

ソフト面も明らかに違っていますよね。 新作映画のCMを見ると 「3D」の文字が躍っていますし、デジタル放送の影響もあるでしょう。 さらに、ゲーム関連も新しい機能が続々と開発中です。

今回の3Dのブームは定着するのではないかという予測もうなずけますよね。    

               

・単眼立体情報とは?

ごくまれに、両眼の視力差が大きい方や視力矯正しても視力が0.3以下の方、眼位のズレ等の理由により、両眼による立体視を行わず単眼で立体情報を得ている方がいらっしゃいます。

日常生活は普通に送られていますので単眼立体情報だと言うことに気が付きませんが、単眼で立体情報を得ている方は3D映像を楽しむ事が出来ない場合が多くありますのでご注意ください。

因みに、単眼立体情報とは経験や知識からも立体情報を得ているという事です。

物の大きさを知っていれば距離感を判断できるというものです。

例えば、車の大きさを知っているから小さく見える場合は遠くにあると認識し、それが徐々に大きくなってきたら近づいていると認識する事が出来るというものです。

さらに、影も立体感を得るには大切な情報ですし、絵画に使われる遠近法も単眼でも立体感を得る事が出来る手法の一つです。